第102章

今泉肇は白髪の三井教授と向き合うなり、隠しきれない悔恨を顔に滲ませた。

帝都で「茶の正統」と言えば、茶学協会の院長こそが公的な頂点――それが暗黙の了解だ。

今泉肇は、代々文墨と雅事を嗜んできた家の看板と、「文官清流」と称された祖の名声を背に、少しばかり大きく出ていただけ。筆を弄ぶのが好きな学者や教授たちに気に入られていたに過ぎない。

三井教授は言い切ると、ふっと視線を今泉理子の茶碗へ滑らせた。風で散った泡の名残を確かめるように近づき、茶湯の色を覗き込む。

泡が散ってしまっても、湯の表情は残る。点て手の腕は、そこに出る。

「今泉理子の一服は、仮にあの風がなくても『咬盞』の締まりが足り...

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